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虫歯と皮膚病

虫歯と皮膚病

今回は、むし歯が関係する皮膚の病気についてです。
(臨床皮膚科、最近のトピックス2007から東京医科歯科大皮膚科の佐藤先生の論文から)

皮膚の病気で、歯医者さんに紹介状を書くことの多いのは、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:手足に膿がたくさんできる病気で、水虫に症状が似ていますが、まったく別の病気です)です。歯にかぶせた金属が関係している場合があるからです。

他に金属が関係している可能性がある病気は、

異汗性湿疹(いかんせいしっしん:手足に小さい水ぶくれがたくさんできて、赤みとかゆみをともないます。これも水虫とよく似ています)

扁平苔癬(へんぺいたいせん:手の甲や四肢に紫色で表面がツルツルした少しもりあがる皮疹ができ、頬の粘膜に白い網目状の症状や唇が全体にただれたりします)

などです。

少し前ふりが長くなりました。

今回は、金属ではなく、むし歯が関連する皮膚病についてです。

歯の感染症で起こる皮膚疾患は、

1.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)・・・金属が有名ですが、医科歯科大の佐藤先生は、掌蹠膿疱症で歯の金属を除去して治った患者さんは、57例中3例(5%)と述べておられます。こんなに少ないとは、ちょっとショックでした。

掌蹠膿疱症の患者さんは歯科にかかる方が多いので、歯や歯肉についてはきっときちんと診てもらっているだろうと、皮膚科医は安心してしまいます。

「何か歯や歯肉に症状ありませんか?」
「歯医者にもかかってるし、症状もないよ」

佐藤先生の経験では、でも、詳しく調べてみたら、歯の根元に膿がたまっていた患者さんがいたそうです。

2.アナフィラクトイド紫斑(アナフィラクトイドしはん、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病)

下肢に紫や赤の斑点がたくさんできて、一部は水疱や血疱(血がたまった)になります。腎炎、関節の痛み、腹痛などをともなうことがあります。のどの痛みや発熱などの風邪症状が治ってから、上のような症状が出ます。子供に多いのですが、大人もなります。大人の場合は風邪症状が先行しないことが多く、特に中高年の患者さんでは、内臓に癌がくれていることがあります。中高年では、癌が隠れていないか検査が必要です。

さて、佐藤先生の経験では、皮膚科に入院した29例中14例に歯の感染症がみつかっているそうです。5人は歯の治療で数日以内に治ったそうです。

患者の半数に歯根病変があったのですね。驚くべきデータです。大人のアナフィラクトイド紫斑はだらだらと症状が続き、子供より腎障害もおきやすいと言われています。歯の感染症って怖いですね。

3.貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)
下肢や背中に500円玉大の丸くてじくじくした、とてもかゆい湿疹ができて、どんどん増えていく病気です。悪化すると手足などに1-2mmの小さいぶつぶつが多発してきます。冬に多い皮膚病です。この疾患は皮膚科専門医にかかればすぐよくなります。この病気も歯の感染症が原因になることがあるそうです。

4.じんましん

治りにくい場合は一度歯の検査が必要です。

5.慢性色素性紫斑(まんせいしきそせいしはん:特発性色素性紫斑、シャンバーグ病、マヨッキー病などとも呼ばれる)

両方の下肢(特にすね)に2-10cm大までの赤紫と茶色がまざった皮疹が多発します。よく見ると、1mm以下の小さい紅い点が集まって1つの皮疹を作っています。

恐ろしそうな病名ですが、湿疹に皮膚の毛細血管からの出血が合わさったような病気で、全身的にはぜんぜん問題になりません。ただ、なかなか治りません。

病理組織(皮膚生検)では、皮膚のリンパ腫の1つである菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)や皮膚を攻撃する膠原病などとまぎらわしい像を呈しています。

佐藤先生はこの病気の一部には歯の感染症が関連しているとおっしゃておられます。

長くなったけど、勉強になったなぁ。



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2007年12月31日 トラックバック(0) コメント(0)












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