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わかりにくい医学用語と智の呪縛

昨年10月に、病院で使われている言葉が一般の方にはかなりわかりにくいという報道がありました。国立国語研究所からの報告です。そして今月7日に最終報告<「病院の言葉」をわかりやすくする提案>が同研究所のHPにアップされました。

特にわかりずらい、あるいは間違って理解している、あるいは新しい概念など、100の言葉について説明されています。多くの医療者などから意見を求め、それに基づいていくつかの改定を行った後にまとめられた提案です。大変ですよね。こういう仕事は。

このブログの最も大切にしているテーマも「わかりやすい言葉で説明する」です。国立国語研究所の提案に文句をつける気はまったくありませんが、ちょっと私なりの説明を試みてみました。

まず言い訳を。
医学用語は科や病気の種類によって意味が微妙に変わります。今回は皮膚癌に限って、私が理解している範囲(個人的な印象)で説明してみます。
関連記事:癌について調べたいときのお勧めサイト

予後(よご)・・・今後(比較的長期的な)の病状の変化の予測・・・がん患者から聞かれることが多いです。具体的にいうと、あとどれだけ生きられるか?、という場面で使うことが多いのではないでしょうか。あくまで医療者間の討論で使う言葉であって、普通患者さんには使いません。「あとどれだけ生きられますか?」・・・答えにくい質問です。確率的には1年後に何%が生きているか(生存率)というデータはあります。でも、患者さんごとに状態に違いがありますから予測は難しいのです。あくまでも確率ですので。

寛解(かんかい)・・・症状が良くなること・・・と説明されています。皮膚科ではガンの治療法、化学療法(かがくりょうほう、狭い意味で抗がん剤治療・・・わかりにくい言葉100に這入っています)の効き具合について使うことが多い言葉です。でも正確には(定義上は)、「寛解」は白血病などの血液のガンの効果について使う言葉です。ぼこっとかたまりでできる癌(固形癌こけいがん・・・胃がん、肺がん、乳がんなど、そして皮膚がんも)については、「奏効:そうこう」という言葉使います。奏効率(そうこうりつ)などという言葉もあります。

「この抗がん剤をメラノーマの転移がある患者に用いたときの奏効率は60%である」・・・などと使います。この奏効率にも誤解が結構あります。癌が全て治った(消えた)割合ではありません。

奏効率(そうこうりつ)とは、治療後に癌のサイズ(一番大きいところの径)が元のサイズの70%以下にまで小さくなって、あるいは完全に消えて、それが4週間以上続いた患者の割合です。100人の患者にある薬の治療をおこなっったところ10人は癌がまったく消えた(完全奏効:かんぜんそうこう)、50人が70%以下にまで小さくなった(部分奏効:ぶぶんそうこう・・・5週後には薬の効果がなくなって、また大きくなってきた場合も含む)、10人は変化なし、20人は悪化した・・・・これで奏効率は60%になります。お薬(治療法)の効果を短期間で調べるための指標です。本当の効果は、どのくらい生活の質を落とさないで生きながらえたか、ということが重要になります(でも研究期間が長くかかります)。

生検(せいけん)・・・以前の記事で触れました。
アッカーマン先生と皮膚病理(ひふびょうり)

対症療法(たいしょうりょうほう)・・・病気を完全に消してしまう治療ではなく、今現れている痛み、吐き気、むくみ、発熱・・・などの症状をとる治療のこと。「対症的にみていきましょう」などと使います(状に応していく治療・・・なので対症療法)。病気に負けたみたいでがっかりする方もいるかもしれません。「根本的な治療法でないなら、病気が元からスパッと治る治療でなければ、他の治療は受けません」などとおっしゃる方も時々います。アトピー性皮膚炎の患者さんに言われたことがあります。巷には「スパッと治る」と宣伝している治療法もありますから、そちらに行ってしまう患者さんもいます。    話がそれました。

癌の治療で、例えば癌が手術的に完全に取りきれるような場合は「根治的手術:こんちてきしゅじゅつあるいは根治術:こんちじゅつ」、完全に取れそうもないけど症状を軽くするために行う場合は「姑息的手術:こそくてきしゅじゅつ」と呼びます。手術以外の治療法でも、根治的治療(あるいは根治的療法:こんちてきりょうほう)、姑息的治療という使い方をします。医者になったころから、この姑息的という言葉が嫌いで、あまり使いませんでした。イメージ悪いですよね。化学療法も手術も完全に病気に勝つということを長い間目標にしてきましたので、一部分しか取れない場合は負け戦という悔しい意味合いがあったのかもしれません。

病気を完全に消してしまう治療が見つからないことはしょっちゅうあります。でも、じゃあ治療をまったくあきらめてよいのかというと話は別です。骨に転移して痛い場合は放射線をかければ痛みは取れます。生活に差し障りが出ている症状を1つ1つできる限りつぶしていく治療を「緩和療法:かんわりょうほう」といいます。対症療法や姑息的治療よりは、前向きでイメージもいいです。また、緩和治療は根治的治療とも平行して行われます。完全に治る可能性のある治療をしているのだから、他の症状は我慢する、などということは今ではありません。

表題の「わかりにくい医学用語と智の呪縛」の智の呪縛の部分に触れることができなかったので、次回へ。
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2009年03月22日 トラックバック(0) コメント(0)












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